執筆者:Xavier Bosch

 私が行くとき、隣の席にはいつも同じ男性がいた。あごひげを生やした30代の彼は、試合開始まえからイムノを歌い、帰るときも歌いながら去っていた。

 誰かに"彼はジャーナリストだ"と聞いたが、当時はGoogleがなかったので調べることもできなかった。彼がジョルディ・ガルシア=ソレールという人間だと知ったのはしばらく経ってからである。ある日、カタルーニャ州社会党(PSC)に署名した彼の写真が新聞に掲載されて知ったのだ。

 ジョルディはいつもカンプ・ノウの声援を支配していた。しかし、ディエゴ・マラドーナの2年目に姿を消すと、彼がスタジアムに戻ることはなかった。

 それから数十年後、私たちはカタルーニャのラジオ局とテレビ局の理事会メンバーとして再会した。私はすっかり年をとったが、彼は全然変わっていなかった。

 当時の思い出を話したあと、私は彼になぜスタジアムを去ったのかを聞いた。彼は次のように説明してくれた。「セルヒオ・ゴイコチェアがマラドーナを負傷させたあの日、私はひどく興奮して帰宅した。怒りで我を忘れた。しばらくして、そんな自分が怖くなったんだ。だからスタジアムに戻らないことにした」

 そんなジョルディが、この日曜日に心臓発作で亡くなった。安らかに眠れ。 

MundoDeportivo編集部

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