いまやイニエスタの顔は、ノエビアスタジアム神戸だけでなく、この西日本有数の港町に掲載されているあらゆるポスターに登場する。カタルーニャでの冒険を終えたバルサの伝説的8番は、フットボール人生の最終章に選んだこの街に溶け込んだようだ。
34歳になったイニエスタだが、"情熱とモチベーション"はバルサ時代から何も変わっていないと言う。「シナリオは違うし、プロジェクトも異なる。変わらないのは私のフットボールに対する情熱とモチベーションだ」
バルサで共にプレーしたダビド・ビジャとセルジ・サンペルを迎えた新シーズン、ヴィッセル神戸は4試合で2試合に勝利している。「時間が経つにつれてすべてが順調に進むようになった。チームが監督(ファンマ・リージョ)やクラブのアイデアを少しずつ実現し始めた結果だよ」イニエスタはそのように語った。
イニエスタがヴィッセル神戸に入団したのは昨年7月。Jリーグのシーズンが後半を迎えていた頃だ。クラブオーナーであり、Eコマース大手の楽天の代表である三木谷浩史によって大きくテコ入れされたチームだが、昨シーズンは10位という不本意な結果で終えている。
イニエスタはJリーグの均衡した競争力を強調した。「フットボールはどんな試合でも勝利に大きなコストが必要だけど、日本では特に難しい」特に驚いたのが"インテンシティ"と"試合のリズム"だという。また日本人選手には"テクニック"や"スピード"があり、"ダイナミック"であることも付け加えた。ボールを持っていないときも多くのことが求められる・・・それがJリーグの特徴だそうだ。
三木谷オーナーは、ヴィッセル神戸をバルサのようにプレーするチームにすることで、"アジアナンバーワン"を目指している。その期待を一身に背負うイニエスタだが、プレッシャーに圧倒されることはないという。「私がやってきたのはそのためだからね。みんなから信頼されることはうれしく思っているよ」
イニエスタは続ける。「人々からの愛情、リスペクト、サポートや信頼を感じられる場所に来たかったんだ。スペインでのプレッシャーレベルを超えるのは難しいと思うよ。どの国でもファンやメディアからのプレッシャーはあるけど、特殊な文化を持つ日本ではまたちょっと違うね」
12歳で下部組織に入団してから、バルサでキャリアを過ごしてきたイニエスタ。アスルグラナでの最高の思い出は、2006年にファーストチームでデビューしたことだそうだ。またスペイン代表として参加した2010年ワールドカップ決勝戦で母国に栄冠をもたらしたゴールも忘れられないと言う。
「スペイン代表でもバルサでも、最高の瞬間を過ごすことができた。フットボール選手としての目標はすべて達成することができたと思う。今は個人レベル、家族レベルの幸せを大切にしてフットボールに関わって生きたいんだ。もちろん、多くの人々に高く評価されるようなプレーを目指してね」
ヴィッセル神戸は、下部組織に海外の優れた概念を取り込もうとしているそうだ。イニエスタの新しい挑戦には、日本人選手の育成も含まれており、実際に子供たちにトレーニングをしたこともある。
今夏、コパ・アメリカに出場する日本代表について、イニエスタは「流動的、ポゼッションを重視するフットボールファンが好むプレースタイルで楽しませてくれると思う」とコメントした。

アンドレス・イニエスタ
イニエスタ「日本でも私のフットボールに対する情熱とモチベーションは変わらない」
フットボールを続けたいという理由でFCバルセロナを去ったアンドレス・イニエスタは、ヴィッセル神戸のその目標を発見したようだ。EFE(スペインの通信社)がインタビューを報じた。