執筆者:Francesc Aguilar

 この試合、フェルナンド・イエロの言う「技術的な理由」からベンチスタートになったドン・アンドレス。65分にピッチに入ると、わずか数分のうちにダビド・シルバが作れなかったチャンスをいくつも生み出す。イニエスタが入ったあと、イスコの動きは明らかに違っていた。

 イスコだけでない。それまで相手陣内に攻め入りながらほとんど動きのなかった味方に対して、イニエスタは彼らをプレーさせるボールを供給した。自らドリブル突破を試みる場面もあったし、アキンフェイフに厳しいセーブを強制するシュートも放った。

 この試合が始まる数時間前、スペインでは「スターティングイレブンに何か変更がある」という噂が流れていた。しばらく経つと、ダニ・カルバハルに変わってナチョ・フェルナンデスが先発するという情報がリークされる。だが情報筋は「もっと大きな変更だ」と主張し続けていた。

 そしてスペイン代表がスタジアムに入るとき、その大きな変更が誰のことかがわかる。私はイニエスタがヘッドホンを付けている姿を初めて見た。周囲の声をシャットダウンしていた。イニエスタの悲しげな表情を見たとき、彼が先発しないことが分かった。その数分後、イエロはスターティングイレブンを発表した。イニエスタはベンチに座っていた。

 オフィシャルの説明は、イニエスタは流れを変えるために後半に起用するというものだった。「正気か?」と耳を疑った。ヨハネスブルグで決勝ゴールを決めた英雄は、途中から起用して短い時間で結果を出すタイプではなく、試合を通してチャンスを生み続ける選手だ。この先発には誰もが驚いたと思う。イエロはダビド・シルバやマルコ・アセンシオのプレーを見ていたのだろうか。

 もともとイニエスタは、ワールドカップのあともスペイン代表を続けるつもりだったと言われていた。しかし、この試合のあと、彼はラ・ロハからの引退を発表している。その起用法に失望を感じたのかもしれないが、真相は分からない。イニエスタのような偉大な選手には残念な去り方だが、我々は彼の素晴らしい活躍を絶対に忘れない。 

MundoDeportivo編集部

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