「メッシは自分と同じポジションでプレーしている。だからこそ、どのようにゲームを理解するのか、どのように考え、どのように味方の動きを把握するか、彼からは多くのことを学ぶことができる。そしてそれらはこの先とても大きな力になっていくと思う。ポジションが重なるメッシと同時にプレーをするのは難しいことかもしれない。しかし、それに適応できるように、そして彼がプレーしやすくなる努力をしなくてはいけない。いずれにしても、メッシと一緒にプレーする可能性があるということはとても大きな喜びだよ。チームメイトとして、たくさんのことを吸収したい」

 ペルー代表との試合前日、ホルヘ・サンパオリ代表監督は、アルゼンチンが誇る若きタレントの発言による騒動を鎮静化させようと試みた。しかしメッシとディバラの共存は、指揮官にとっても簡単な課題ではなかったようである。その口から発せられた言葉は、若者がベンチで発したものと同じ内容だった。「我々はパウロの起用方法に関して話し合いを重ねており、彼が将来的にチームに多くのものをもたらしてくれることを理解している。しかし今の我々には、それを試すための時間的な余裕がない。彼とメッシのポジションが重なっていることは事実だ。その理由から、彼の起用法を見極めるのはまだ先になるだろう」

 サンパオリはメッシが代表でもFCバルセロナと同じようにプレーすることを望んでいる。そのため彼はエルネスト・バルベルデがFCバルセロナの監督に就任して以降、何度もカンプノウに足を運び、その戦い方を検証してきた。

 ペナルティエリア付近でボールを受け、ラストパスを出し、自らがゴールを決める、もしくは他のチームメートのゴールを生み出すプレー。サンパオリはその過程でメッシとディバラのプレーポジションが重なってしまうのだと説明している。

 バルサでも同様の問題が起こると考えるのが自然だろう。そして2人が同じポジションでプレーする以上、片方はメンバーから外れる必要がある。そこでメッシが外れることはあり得ない。パオロは素晴らしい選手だが、メッシはその上を行く存在である。彼はいかなる時、いかなる状況下でも決定的な仕事ができるただひとりの存在だ。この10数年間、彼はずっとそうだったし、彼の対戦相手もずっとそう感じてきた。彼が何をし、チームメートに何をさせるかだけではない。彼の存在そのものが対面する11人の選手たちに恐怖心を与えるという点でも、メッシは唯一無二の選手なのだ。

 ネイマールが移籍したあと、バルベルデはその穴埋めとしてどの選手を獲得するかの選択肢を与えられた。当時、指揮官が早急に必要としていたもの、それはスピードだった。補強リストの名前を確認した上で、指揮官はディバラではなくデンベレを選んだ。フランス人フォワードこそ彼が求める能力を備えた選手だったからだ。

 クラブを去ったのはネイマールであり、メッシではない。そしてクラブが今後何年も世界最高のプレーヤーを手元に置けると考えている以上、ディバラがバルサでプレーする可能性はごく僅かしかないだろう。どんな法則にも例外はある。優れた選手はみな共存が可能だという考えも一理あるが、それが常に当てはまるわけではない。今回のケースはその好例だ。


MundoDeportivo編集部

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