この試合の結果、アルゼンチンはワールドカップ自動出場が決まる4位から、プレーオフ出場権の5位に転落。予選突破はさらに厳しくなってしまった。試合後、ホルヘ・サンパオリ監督率いる選手たちは明らかに不満そうな表情を浮かべ、下を向いたままエル・モヌメンタルのピッチを後にしている。

 リーベル・プレートの本拠地から静かに去る選手たちを、また同じように静かに見守るファン。そんな中、セキュリティ用の柵と警備員の後ろから、ひときわ大きな声をあげる人がいた。息子の車椅子を押す父親が叫んでいた。自分の名前が呼ばれていることに気がついたハビエル・マスチェラーノは、すぐにこの親子の元に歩み寄ると、息子フランコくんの小さなユニフォームにサインした。

 ほとんどの選手がスタジアムを後にしたとき、多くの警備員たちに囲まれながら現れた選手がいた。リオネル・メッシだった。国民を悲しませるような結果に終わったにも関わらず、FCバルセロナのスーパースターに微笑みかけるフランコくん。レオとフランコくんの目が合った。

 多くの人々からの期待を背負い、アスルグラナでもラ・セレクシオンでもプレッシャーと共にプレーするメッシ。自分に求められる世界最高のレベルが、このベネズエラ戦では発揮できなかった。個人的にも最悪な一日だったことだろう。しかし、小さなフランコくんにその責任はない。メッシは近寄り、フランコくんに話しかけた。そしてマスチェラーノと同じようにユニフォームにサインすると、親子と一緒に写真の撮影に応じた。メッシはフランコくんに優しく触れた。

 スポーツの世界では確実な勝利など保証されない。しかし、そこでプレーするアスリートが、誰かの人生にほんの小さな喜びを与えることはいつだって可能だ。フランコくんの父親は、メッシの行為に深く感謝した。その光景を目にした周囲の人々は、この背番号10に拍手を送ると共に、彼が母国代表をワールドカップに導いてくれることを願った。もしかすると、これがアルゼンチン代表にとって重要な一歩になる可能性がある。このような人間らしい温かみは、再び成功を収めるための最高のベースとなるはずだ。

MundoDeportivo編集部

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