フットボールの世界では、近年フィジカルが重視される傾向にある。そして、選手を評価する上で、どれだけ速く走れるか、どれだけ高く跳べるか、そしてどれだけ強靭な肉体を持っているかが、重要なポイントとなっている。もちろん、FCバルセロナも、それらを評価対象として含んではいる。しかし、必要不可欠なものだと捉えていないところが一線を画している点である。
ボールは地面を這わすべきものであるのに、なぜ飛距離が必要なのか?
ボールのほうがより速く動くことができるのに、なぜ高い走力が求められるのか?
リオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデス、彼らが世に出てきたことがその答えであり、後にこの3人はバロンドールの表彰台を独占している。ラ・マシアでも、常にフィジカルは大切なものとされているが、その重要度が一番になることはない。
「背の低い選手は辛抱強く見守る必要がある。彼ら3人が頭角を現してきた時には、未だバロンドールの候補者ではなかったのだから」
ペップ・グアルディオラ元バルセロナ監督が、同じく2010年FIFAバロンドール授賞式で発した言葉である。
セマナ・サンタ(聖週間)が祝われたこの1週間では、バルサのフィロソフィーが正しかったことが証明されることとなった。バルサ下部組織のチームは、欧州各地で開催されたトーナメントに参加し、うち計6つの大会で優勝を飾っている。バルセロナの選手たちがクラブの掲げるサッカーを体現していた中で、特にフベニル(U―19)Bのリキ・プッチ、インファンティルA(U―14)のシャビ・シモンズ、そしてインファンティルB(U―13)のアドリア・カプデビラの3人は、各大会で際立ったプレーを見せ、MVPを受賞した。
フベニルとして2年目を迎えているプッチは、キケ・アルバレス監督のもと、素晴らしいシーズンを過ごしている。この才能にあふれた中盤のプレーヤーは、相手ライン間でのプレーを得意とし、広い視野と高い技術を備え、さらにラストパスだけでなく自らもゴールを奪うことができる選手である。
プッチと同じくMIC17(Mediterranean International Cup 2017=2017地中海国際大会)に参加したシモンズは、同大会で改めてそのユーティリティー性を証明している。ピッチの内外で高いリーダーシップを発揮し、その豊富な才能は未だ大きな伸び代を持っている。中盤ならばどのポジションでもプレーをすることができると同時に、決勝で見せたような、ゴール前にも顔を出すことができるのが特徴である。
プレシーズンには日本で行われた大会「U―12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2016」でMVPを獲得し、またリーグでも優秀選手に選出されたアドリア・カプデビラは、アイルランドで行われた、「セント・ケヴィンズ・ボーイズクラブカップ」でも、個人タイトルを獲得している。
どうやら、バルサのDNAはラ・マシアにおいて脈々と受け継がれているようだ。

カンテラ
カンテラが生み出した、バルサのDNAを継ぐ3人のMFがMVPを獲得
FCバルセロナのラ・マシア(バルセロナの下部組織)所属である、リキ・プッチ、シャビ・シモンズ、そしてアドリア・カプデビラの3人は、セマナ・サンタ(聖週間)中に行われた各国際大会において、大会最優秀賞(MVP)を獲得した。